2025.12.7

目次

  1. はじめに:あの「キレッキレ」なピアノの正体
  2. なぜ人気? リリースカットピアノと「丸サ進行」の黄金コンビ
  3. 【ソフト編】DTMでリリースカットピアノを作る方法
  4. 【ハード編】電子ピアノでリリースカットピアノを再現するには?
  5. まとめ:音作りでピアノはもっと楽しくなる

はじめに:あの「キレッキレ」なピアノの正体

最近のJ-POP、特にYOASOBIさんの楽曲などを聴いていて、「このピアノ、すごい音が短いな?」「リズムが強調されててカッコいいな」と思ったことはありませんか?

普通のピアノって、鍵盤から指を離しても、少しだけ「ホワン…」という余韻(残響)が残りますよね。学校の音楽室にあるグランドピアノを想像してもらうとわかりやすいと思います。 でも、最近流行っているあのピアノの音には、その余韻がバッサリと無いんです。

音が鳴った瞬間に「パンッ!」と始まり、指を離した瞬間に「プツッ!」と切れる。 この独特なサウンドのことを「リリースカットピアノ」と呼びます。

「リリース(余韻)」を「カット(切る)」するピアノ。そのまんまですね! でも、このシンプルな加工が、現代の速いテンポの曲や、ネット発の音楽にとてつもなくマッチするんです。今回は、このカッコいい音の作り方を、機械が苦手な方にもわかるように解説していきます。

なぜ人気? リリースカットピアノと「丸サ進行」の黄金コンビ

作り方の前に、少しだけ「なぜこの音が流行ったのか」というお話をさせてください。ここを知っていると、演奏するときの気分が全然違います。

このリリースカットピアノを一躍有名にしたのは、やはりYOASOBIの『夜に駆ける』などのヒット曲でしょう。そして、そこで使われているコード進行(和音の流れ)にも秘密があります。

それが「丸サ進行」です。

これは椎名林檎さんの『丸ノ内サディスティック』という曲で有名になったことからそう呼ばれている、非常におしゃれでエモいコード進行(Just The Two Of Us進行とも呼ばれます)。 YOASOBIのAyaseさんは、この「丸サ進行」と「リリースカットピアノ」を組み合わせる名手です。

  • 丸サ進行 = オシャレで流れるような、都会的な響き
  • リリースカットピアノ = 歯切れが良く、リズムマシンのような無機質な響き

この「エモさ」と「デジタル感」が組み合わさることで、人間味がありつつも近未来的な、あの中毒性のあるサウンドが生まれるんですね。 もしあなたが「丸サ進行」で曲を作ったり弾いたりするなら、ピアノの音をリリースカットにするだけで、一気に「今っぽい」雰囲気になりますよ。

【ソフト編】DTMでリリースカットピアノを作る方法

さて、いよいよ本題の「作り方」です。 まずは、パソコンで音楽を作る(DTM)場合の設定方法から。

「難しそう…」と身構えなくて大丈夫です。やることは基本的に「つまみを一つ回すだけ」です。

多くのピアノ音源ソフトには、「ADSR」という設定項目があります。これは音の形を決める4つの要素です。

画像引用:SEVEN&EIGHT MUSIC シンセサイザーの「アンプ・エンベロープ」の基本

  • Attack(アタック):音の立ち上がり
  • Decay(ディケイ):減衰
  • Sustain(サステイン):伸び
  • Release(リリース):余韻

この中の「R(リリース)」のつまみを、限りなく「0」に近づけてください。

これだけです。 通常、ピアノのリリース値はある程度確保されていますが、これをゼロにすることで、鍵盤を離した瞬間に音が完全に消えるようになります。

さらに本格的にしたい場合は、「コンプレッサー」というエフェクトを使います。これは音を圧縮して粒をそろえる道具です。「アタック(音の出だし)」を強調する設定にしてかけると、より「パツンッ!」とした、打楽器のようなピアノ音になります。

【ハード編】電子ピアノでリリースカットピアノを再現するには?

「私はパソコンじゃなくて、電子ピアノや生ピアノで弾きたいんだけど…」 という方もいますよね。ハードウェア(楽器本体)や演奏技術でのアプローチを見てみましょう。

1. 電子ピアノ・シンセサイザーの場合

お持ちのキーボードやステージピアノに「音色エディット(Edit)」機能はついていますか? もしあれば、ソフト編と同じく「Release(リリース)という項目を探して、数値を下げてください。 もし細かい設定ができない機種なら、「Bright Piano」「Rock Piano」といったプリセットを選んでみてください。これらは元々、音が硬く歯切れよく設定されていることが多いです。

2. 生ピアノ(アコースティックピアノ)の場合

実は、これが一番難しいです。なぜなら、本物のピアノは構造上、どうしても弦やボディが共鳴して余韻が残るからです。 でも、諦めるのは早いです! リリースカットピアノの「ニュアンス」は演奏技術で近づけることができます。

ポイントは「極端なスタッカート」です。 鍵盤を叩いたら、熱いアイロンに触れてしまった時のように、パッと指を離します。ペダルは基本的に使いません(踏んでも一瞬だけ)。 指先を硬くして、鍵盤の底を叩くようなイメージで弾くと、アタックの強い鋭い音が鳴ります。

「機械のような正確さ」を人間が必死に演奏する。このギャップこそが、生演奏におけるリリースカットピアノの面白さかもしれません。

まとめ:音作りでピアノはもっと楽しくなる

リリースカットピアノは、単に「音を短くする」というテクニックですが、それだけで曲の世界観がガラリと変わります。

「バラードだと思って弾いていた曲を、リリースカット風に弾いてみたら、急にダンスミュージックっぽくなった!」なんて発見もあるはずです。 YOASOBIの曲に限らず、いろんな曲で「歯切れの良さ」を意識して遊んでみてください。ピアノの新しい表情が見えてくると思いますよ。


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