ピアノを弾くとき、私たちの足元には当たり前のように「ペダル」がありますよね。右側のペダルをグッと踏み込んで、音をふわっと響かせる……。あの余韻こそがピアノの醍醐味と言っても過言ではありません。

でも、もしあなたが18世紀、つまりモーツァルトが活躍していた時代にタイムスリップしたとしたら、ピアノの足元を見て驚くはずです。「あれ? ペダルがないぞ……?」と。実は、現代のような足踏み式のペダルが普及する前、ピアニストたちはなんと「膝(ひざ)」を巧みに使って音をコントロールしていたのです。今回は、ちょっと意外で面白い「ニー・レバー」時代の物語をお届けします!

1. 足ではなく「膝」? 謎の装置ニー・レバーとは

現代のピアノには足元に3本のペダルがありますが、ピアノの原型である「フォルテピアノ」の初期モデルには、足元に何もありませんでした。その代わり、鍵盤の裏側(底面)に、木の棒のようなものが突き出ていたのです。これが「ニー・レバー(膝レバー)」です。

ピアニストは椅子に座り、太ももを少し持ち上げるようにして、このレバーを膝で押し上げます。すると、現代のダンパーペダルと同じように、弦の振動を止める「ダンパー」が浮き上がり、音が長く響くようになる仕組みです。つまり、当時のピアニストは、演奏中に膝をピクピクと上下させて表情をつけていたというわけ。ちょっと不思議な光景ですよね!

2. モーツァルトも膝で奏でていた? フォルテピアノの世界

あの有名な天才モーツァルトも、このニー・レバーをこよなく愛した一人でした。彼が1777年に父親へ宛てた手紙の中で、当時最高のピアノ製作者だったシュタインの楽器について「膝で動かす装置が他のどれよりも素晴らしいんだ!」と大絶賛しています。

当時の楽器は今のピアノよりもずっと音が軽やかで、一音一音が繊細でした。膝を使うことで、今のペダルよりも「ほんの少しだけ響かせる」「一瞬だけ余韻を残す」といった、非常に細かいニュアンスの調整が可能だったと言われています。モーツァルトのキラキラとした軽快な音楽は、実は彼の「膝」のテクニックに支えられていたのかもしれません。

3. なぜ足に変わったの? ニー・レバーとペダルの違い

それほど便利だったニー・レバーが、なぜ現代のような足元のペダルに変わってしまったのでしょうか。主な違いを比較してみましょう。

特徴 ニー・レバー(旧式) 足踏みペダル(現代)
操作部位 膝(太もも) 足先
疲労度 脚全体を浮かせるため疲れやすい 踵を支点にするため楽
表現の幅 繊細な微調整が得意 力強く豊かな響きが得意

音楽の舞台がサロン(広間)から大きなコンサートホールへと移り変わるにつれ、ピアノには「より大きな音」と「より豊かな響き」が求められるようになりました。そうなると、膝を浮かせて踏ん張るよりも、足をしっかり地につけてペダルを操作するほうが、演奏者の負担も少なく、パワフルな演奏が可能になったのです。時代のニーズが、膝から足へとバトンを渡したというわけですね。

4. 膝で表現する「究極のエモーション」

ニー・レバーの時代を想像してみると、演奏者の体全体が音楽に合わせて躍動していたことがわかります。右足を休める場所もなく、両足をしっかり踏ん張ることもできない中で、絶妙に膝を浮かしながら奏でる。それはまさに、全身を使った「エモーションの表出」でした。

今でも古楽器(当時のままのピアノ)を演奏するプロの方は、「膝を使うことで、現代のピアノでは絶対に出せない、空気が震えるような繊細な響きが生まれる」と語ります。便利なペダルの影に隠れてしまった、あの「膝による魔法」は、音楽が今よりももっとプライベートで、密やかな喜びだった時代の象徴なのかもしれません。

5. まとめ|進化の歴史が今の美しい音を作っている

ピアノが「ニー・レバー」から「足踏みペダル」へと進化した歴史、いかがでしたか? 私たちが今日、ポップスやクラシックで当たり前のように聴いているあの豊かな余韻は、何百年もの間、試行錯誤を繰り返してきた先人たちの工夫の賜物です。

「歴史」も「楽しみ」も、一緒に学んでみませんか?

Hanaポップスピアノでは、ただ曲を弾くだけでなく、ペダルの効果的な使い方も丁寧にお伝えしています。難しいことは抜きにして、ピアノをもっと身近に、もっと好きになれる時間を一緒に過ごしましょう!

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