【目次】
- イントロ、飛ばしてませんか?
- ピアノイントロって、何がそんなにいいの?
- 聴いた瞬間、世界が変わるピアノイントロ5選
- イントロは、物語の“鍵盤”
- さいごに:イントロに、もう一度耳を傾けて
イントロ、飛ばしてませんか?
最近、とても悲しい言葉を耳にしました。
「イントロは飛ばすもの」だと——。
そう、今の時代、音楽を聴くスタイルがどんどん“即効性”重視になっています。
サビをいち早く聴きたい。テンションが上がるところだけ再生したい。
その気持ちはわかります。わかるんです。けれど、ですよ。
イントロって、そんなに軽くスキップしていい存在なんでしょうか?
そもそも「イントロ」とは、イントロダクションの略で、
曲の“導入部”、つまり物語でいえば“第一章”とか“プロローグ”にあたる部分です。
音楽の世界では、ここで曲の世界観が立ち上がり、
リスナーをそっとその物語の中へと誘(いざな)ってくれる、大事な役目を担っています。
特に、ピアノによるイントロは、繊細で情緒的で、
ほんの数音だけで私たちの心を優しくノックしてくるような魔力を持っています。
それを飛ばしてしまうのは、例えるなら…
映画館に入って、オープニングの映像をすっ飛ばして、
いきなりクライマックスから観るようなもの。
うーん、それってちょっともったいないですよね?
もっとイントロを聴いてほしい!という想いで、今日もこうして語り始めております。
ピアノイントロって、何がそんなにいいの?
ピアノのイントロには、言葉にならない「始まりの感情」が込められていることが多いんです。
ボーカルの前に奏でられる数小節の音。
それは単なる準備運動なんかじゃない。
むしろ、「この曲はどんな空気をまとっているのか」「どんな感情の扉を開けるのか」——
そんな“物語の鍵”を握っているのが、ピアノイントロなんです。
イントロだけで泣きそうになる曲。
イントロだけで懐かしさが込み上げる曲。
イントロだけで恋に落ちる曲。
……あるんですよ、本当に。
聴いた瞬間、世界が変わるピアノイントロ5選
ではここから、イントロ愛を込めて、傑作ピアノイントロをいくつかご紹介します。
どれも“イントロ飛ばし厳禁”の名曲ばかり!
♪ 1. 平井堅『瞳をとじて』
映画『世界の中心で、愛をさけぶ』の主題歌。
ピアノのポロロン…とした音から始まるこのイントロは、まるで静かに降り始める雨のよう。
一音一音に「余白」があり、すでに“心がじんわりと濡れて”いきます。
この導入なしに、あの泣けるメロディは成立しません。
♪ 2. ヨルシカ『アポリア』
軽やかでポップなピアノの音に反して、複雑な変拍子が繰り返されるテクニカルなイントロ。不思議なリズムを楽しんでいるうちに歌メロが展開され、ピアノの音は伴奏としての役割に代わります。
まるで空へ飛び立つための「助走」のようなピアノフレーズは、この曲のイントロとしてこれ以上なく魅力的だと感じます。
♪ 3. 松任谷由実『春よ、来い』
聞きなじみのある切なげなコード進行に、意外と細かいリフ(リフレイン=反復)が重なり、春の訪れを待つような心持ちを演出する名イントロ。
ピアノは静かに、でも確かに、「希望と焦燥」の感情を届けてくれます。
歌が始まる前から、もう涙腺が緩む人、きっと多いはずです。
♪ 4. Billy Joel『Just The Way You Are』
洋楽からも一曲。ビリー・ジョエルの代表曲。
フェンダーローズのエレピによる、やわらかく浮遊感のあるイントロが絶品。
まるで誰かが耳元で「大丈夫だよ」と囁いてくれるような…そんな優しさに包まれます。
イントロは、物語の“入り口”
曲の前奏って、例えるなら映画でいう「冒頭の一場面」や、小説でいう「プロローグ」。
その一節で、「これからどんな世界に入るのか」を教えてくれる。
特にピアノイントロは、抽象的で、感情的で、詩的な扉になっていることが多い。
メロディだけじゃない。コード進行、音色、間(ま)、タッチの深さ。
全部が「語りかけてくる」のです。
だから私は、イントロをスキップされると……悲しい。
まだ会ってもいないキャラクターを、スキップで無視されるような寂しさがあるんです。
さいごに:イントロに、もう一度耳を傾けて
ここまで読んでくださった方、本当にありがとうございます。
イントロ、飛ばさず聴きたくなってきましたか?
音楽は、音が鳴ったその瞬間から、もう始まっているんです。
ピアノが、そっと空気を震わせるその一拍目から、
あなたの感情を揺さぶる準備は、始まっている。
ぜひ次に曲を再生する時は、「イントロ、ちょっと待ってあげて」ください。
そこには、あなたの気づかなかった景色や感情が、そっと横たわっているかもしれません。


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