2026.2.5

コンサートホールで見かけるグランドピアノ。鏡のようにピカピカに磨き上げられ、演奏者の指先や衣装が映り込むあの「」は、一体何で塗られているのか不思議に思ったことはありませんか?

実は、あのツヤツヤの正体は、私たちが普段使っている身近なある素材の仲間なんです。今回は、ピアノの美しさと音を守る「塗装」の秘密についてお話しします。

現代ピアノの主流「ポリエステル塗装」

現在、日本で作られているピアノのほとんどは、「ポリエステル樹脂」という素材で塗られています。

補足解説

「樹脂」と聞くと難しく感じますが、簡単に言えばプラスチックのような素材です。これを厚く塗り重ねて、最後に徹底的に研磨することで、「鏡面仕上げ」が完成します。

  • メリット: 膜が非常に硬くて丈夫。湿気を通しにくいため、木材で作られたピアノ本体を環境の変化から守ってくれます。
  • 特徴: 少々のことでは傷がつかず、ツヤが長持ちします。

高級ピアノや古いピアノに使われる「ラッカー塗装」

一方で、世界最高峰と言われるスタインウェイなどの高級ピアノや、数十年前の古いピアノには「ラッカー塗装」が使われていることがあります。

補足解説

ポリエステル塗装が「硬い鎧」だとすれば、ラッカー塗装は「薄い皮膚」のようなイメージです。

種類 特徴
ラッカー塗装 塗膜が薄く、木材の呼吸を妨げないため、音が響きやすいと言われます。ただし、傷や湿気に弱く、お手入れが大変です。
漆(うるし) ピアノの黎明期や、日本にピアノが入ってきた当初の超高級品に使われていました。現代では特注品を除き、ほとんど見かけません。

ピアノの塗装が「黒」である意外な理由

そもそも、なぜピアノは黒いものが多いのでしょうか?これには歴史的な背景と、実用的な理由があります。

補足解説

かつてピアノがヨーロッパで普及した際、黒い塗装(エボナイズド・フィニッシュ)は高級な「黒檀(こくたん)」という木材に似せるための工夫でした。

  • 威厳とフォーマル: 燕尾服(えんびふく)と同じように、クラシック音楽の場にふさわしい「最もフォーマルな色」として定着しました。
  • 木目の隠蔽: 木材の継ぎ目や模様がバラバラでも、黒く塗りつぶせば美しく均一に見えるという製造上のメリットもありました。

塗装は見た目だけじゃない!音を守る大切な役割

ピアノの塗装は、ただのお化粧ではありません。実は「音色をコントロールする」という非常に重要な役割を持っています。

ピアノは全身が木でできています。もし塗装がなければ、木が湿気を吸ったり吐いたりして、すぐに歪んでしまいます。塗装という「膜」があることで、ピアノは長期間にわたって安定した音を出すことができるのです。

また、塗装の硬さや厚みが変われば、音の「明るさ」や「響き」も変わります。職人さんは、音のことまで計算して、あの美しい黒を塗り上げているんですね。

まとめ|ピアノの黒は技術と歴史の結晶

ピアノの黒い塗装の正体は、現代では主に「ポリエステル樹脂」です。あの鏡のような輝きは、ただ塗るだけでなく、職人さんの丁寧な研磨作業によって生み出されています。

見た目の美しさはもちろん、大切な楽器を環境の変化から守り、豊かな音を響かせるための知恵が、あの漆黒の中に詰まっています。次にピアノを間近で見る機会があれば、ぜひその「職人技の輝き」をじっくり眺めてみてください。


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