
音楽を学ぶとき、多くの人が最初に「ドレミファソラシド」と「CDEFGABC」という二つの音名表記に出会います。しかし、この二つはどのように生まれ、なぜ異なる表記が使われているのでしょうか?また、日本の音楽教育ではなぜ「ドレミ」と「ABC」の両方が使われるのでしょうか?本記事では、それらの関係と歴史を紐解きながら、日本の音楽教育とのつながりについて考えていきます。
1. ドレミ(イタリア音名)の由来と日本での使用
イタリアで生まれた「ドレミファソラシ」
「ドレミファソラシ」という音名表記は、11世紀のイタリアの修道士・音楽教師であるグイード・ダレッツォ(Guido d’Arezzo) によって作られました。彼は、当時のグレゴリオ聖歌の一つ「Ut queant laxis」の各節の最初の音を使い、それぞれの音名を付けました。
この聖歌の歌詞を見てみましょう:
Ut queant laxis
Resonare fibris
Mira gestorum
Famuli tuorum
Solve polluti
Labii reatum
Sancte Ioannes
このように、各フレーズの最初の音が「Ut, Re, Mi, Fa, Sol, La」となっており、これが現在の「ドレミファソラ」に発展しました。(後に「Ut」は発音しやすい「Do」に変更され、「Si(ティ)」が追加されました。)
日本でドレミが使われる理由
日本の音楽教育では、西洋のクラシック音楽の影響を強く受けています。特に、明治時代に導入された「唱歌教育」 では、イタリア式の音名(ドレミ)が採用されました。これは、日本語の発音体系に適していたため、日本の学校教育で親しまれるようになりました。
また、ピアノやソルフェージュ教育でも「ドレミファソラシド」が基本となり、日本の音楽学習に深く根付いていったのです。
2. ABC(英語音名)の由来:なぜ「A」ではなく「C」から始まるのか?
音楽理論におけるABC表記
「A B C D E F G」という音名表記は、もともと古代ギリシャの音楽理論に由来します。しかし、現在のように「C D E F G A B」という並びになるのには、「自然な音階」と「教会旋法」の影響 があります。
なぜ「C」から始まるのか?
現代の音楽で最も基本的なスケールは Cメジャースケール(ドレミファソラシド) ですが、このスケールは、「ピアノの白鍵だけで弾ける」 ため、基準として扱われるようになりました。
実は、西洋音楽の初期段階では「A」から始まる自然音階(A, B, C, D, E, F, G=ラシドレミファソラ)が主流でした。しかし、Cメジャースケールが最もシンプルで理論的に扱いやすかったため、「C」を基準とする楽典が広まり、今日の標準になったのです。
3. ドレミとABCの対応表
現在、世界中の音楽教育では「ドレミ」と「ABC」の両方が使われています。以下は、それらの対応表です。
ドレミ | ABC | 日本語(ハ音記号) |
---|---|---|
ド(Do) | C | ハ |
レ(Re) | D | ニ |
ミ(Mi) | E | ホ |
ファ(Fa) | F | ヘ |
ソ(Sol) | G | ト |
ラ(La) | A | イ |
シ(Si) | B | ロ |
また、日本の伝統音楽(雅楽や民謡)では、西洋の音名とは異なる独自の音階や表記が使われていますが、近代音楽教育の普及により、西洋音楽の表記法が一般的になりました。
4. 日本の音楽史との関係
日本では、明治時代に西洋音楽が正式に導入される前から、「呂律(りょりつ)」という音階体系 や、尺八や箏の「音名」が使われていました。しかし、西洋音楽の影響で ドレミとABCが学習の標準 となり、学校教育に組み込まれました。
なぜ「ドレミ」と「ABC」の両方を学ぶのか?
- 学校教育(ソルフェージュ)では「ドレミ」 が主流。
- コード表記や楽典では「ABC」 が使われる。
- 音楽理論では「Cメジャースケール」を基準に考えるため、ABC表記が必要 になる。
このように、日本では 「ドレミ」と「ABC」の両方を学ぶことが必要不可欠 になっているのです。
5. まとめ
ドレミとABCの違いと歴史
- 「ドレミ」はイタリア語由来 で、グイード・ダレッツォが開発。
- 「ABC」は古代ギリシャ由来 で、中世ヨーロッパで体系化。
- Cメジャースケールが基準となり、「C D E F G A B」表記が定着。
- 日本ではドレミが唱歌教育に取り入れられ、ABCはコードネームや楽典で使用される。
このように、「ドレミ」と「ABC」は異なる起源を持ちながらも、現代の音楽理論では両方が重要な役割を担っています。音楽を学ぶ際には、両方の表記を理解することで、より深く理論を身につけることができるでしょう!
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